自分が所有しているドメインが、知らないうちに他人に乗っ取られるという事態を考えたことはありますか?信じられないことですが、実際に起こっている出来事です。


米ネットワーク・ソリューションズ社(NSI)では過去1年間にドメインが乗っ取られる事件が10数回起きており、大手のウェブドメインのいくつかが、少なくとも一時的には占拠される事態が発生しています。ドメインが乗っ取られるとメールやFTPなど全てのコントロールを失うことになり、ウェブで商取引を行っているサイトでは深刻な被害を及ぼしかねません。NSIでは事件以降、不正なドメイン変更手続を見破る努力をしてきていると言うけれど、6月に至っても尚、同様の被害は継続しています。これまでに起こった乗っ取り事件では、名義変更承認に関する電子メールが本来の所有者に一切来なかったわけだから基本的なセキュリティーすら守られていないようです。

また、ドメインにまつわる問題として、有名な会社名や個人名など、需要の高そうなドメインを先行登録し、商標権者に高値で買い取りを迫るなどの不正行為も後を絶たない。 最近では米の有名アーティスト、マドンナが、「madonna.com」を取得していた経営者を世界知的所有権機関(WIPO)の仲裁調停センターに提訴していたこともわかりました。経営者側は「マドンナ」というのはただのファーストネームに過ぎないと主張しているようですが、この裁判の結果が今後のアーティスト名ドメインの調停に影響を与えることは必至でしょう。

こういう事態を重く見て、日本でも工業所有権仲裁センターと日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が、ドメイン名をめぐる紛争処理に共同であたる協定に調印しました。8/22のことです。これにより裁判よりも安価で迅速に解決することを目指しているとのこと。

ところで皆さん、WEB110の正式なドメイン名をご存じですか?
正解はweb110.comです。web110.orgでもweb110.netでもありません。 ところが最近になってWEB110というタイトルを使って偽のWEB110を開設するグループが現れました。今のところウェブサイトとして確認できたのはweb110.orgだけですが、同グループが運営するverifine.comやverifine.netにおいてもWEB110の名前を騙っており、いくつかのサーチエンジンにもWEB110と全く同じ説明文で複数のダミーページを登録していることも判明しました。ヒットしたダミーページにアクセスすると、そこには「このホームページはアドレスが変わりました」と書かれ、web110.orgへジャンプするように作られています。このサイトを開設した日本人グループはアメリカにペーパーカンパニーを作っており、WEB110の知名度を悪用して何かを企んでいることが伺えます。このケースは前述のドメイン乗っ取りとは方法こそ異なるものの、悪意を持っている部分において同種の事件と考えます。

私は、この事件に遭遇したとき、どうすれば一般ユーザーが偽者に欺かれないか、いろいろ考えました。しかし現時点では自分のウェブサイトやメールマガジンにおいて状況をアナウンスすることしか有効な手だては見つかりません。web110.comというドメインは守れても、偽のWEB110が作られることは防ぎようがないし、それらがサーチエンジンに登録されることも防げないのです。もちろん、「不正競争防止法」や「商標登録」によって対処でき無くはありませんが、相手が米国の実態のないペーパーカンパニーでは苦労します。今後はドメインの紛争処理以外に、サーチエンジンへの不正登録も視野に入れた新たな仲裁調停センターが必要になるのかも知れません。