SNS投資型詐欺に運転免許証画像を渡してしまった場合の悪用リスクと対処法

昨日、中学時代の同級生から久しぶりにLINEに連絡があった。どうやらSNS型投資詐欺の罠にハマってしまったらしくかなり焦っている様子だった。電話をかけて詳しい状況を聞いてみたところ、FacebookかInstagramのリールから知った投資家の勧めでLINEグループに参加し、そこで口座開設のための本人確認書類として運転免許証の画像を求められ、FX等の金融トレーディングアプリ(MetaTrader5)をインストールして後は入金するだけというところで踏みとどまったらしい。つまり金銭被害はギリセーフだったわけだが、運転免許証の画像が拡散されたり悪用されるのを何とか阻止したいと思って私に相談してきたのだった。

口座開設のための本人確認書類として身分証明書と個人情報を求めてきた様子(左)

LINEで直接個人情報を提供することを躊躇した相談者への回答の様子(右)

きっと同じような状況に陥ってしまった人もいるのではないかと思ったので、今回は、こうした投資型詐欺で運転免許証やマイナンバーカード、パスポート等の画像を渡してしまった場合に考えられる悪用例と、被害者が取りうる対応についてまとめてみることにした。

詐欺師の身分証明書として悪用されるパターン

これが最も可能性が高そうだ。現に詐欺師はSNSやLINEのやり取りの中で他人の顔写真や身分証明書と思われるものを提示して相手を信用させようとしていることから、そういう目的で悪用されるおそれが高いと考える。

【取りうる対応】
もし本当に自分になりすました詐欺が行われたなら、その状況に応じた対処をすることになる。たとえばSNS上で被害者が自分の免許証などを載せて犯人扱いしていたらなら、事情を説明して取り下げてもらう必要があるだろう。対策としては、都道府県警察本部のサイバー犯罪対策課又は最寄りの警察署に今回の状況を相談しておくことで警察の記録に残し、今後自分の名を騙った詐欺が行われた場合にあらぬ疑いをかけられないようにすることだ。

オンライン上で何かのアカウントを登録する際の身分証明書として悪用されるパターン

SNSのアカウント作成時に運転免許証やパスポートを要求されることはほぼないと思うが、たとえば利用に際して年齢確認が義務付けられている出会い系サイトやマッチングアプリなどでは身分証明書の画像を求められる場合があるかも知れない。そうするとそれらのサービスで不適切な行為をしたり、いわゆるロマンス詐欺のアカウントとして悪用される可能性なども否定できない。

【取りうる対応】
事前に対策できることはないと思われる。運転免許証やパスポートを紛失したり盗まれたわけではないので再発行する必要もないし、このような理由で再発行が可能かもわからない。再発行したところで偽造された身分証明書で登録したサイトで不適切な行為をすることを防止する効果もない。これに関しては将来自分が何らかのサイトに登録しようとした際に登録を拒否されるといった不利益が生じするおそれがあるものの、その場合はケースごとに対処するしかないだろう。

詐欺のカモリストとして流通するパターン

SNS型投資詐欺も特殊詐欺の一種だと考えると、被害者の名簿が何らかの形で流通してまた新たな詐欺のターゲットとなる可能性は十分考えられる。メールアドレスやSNSのアカウント情報も把握されている場合、新たな詐欺師からのコンタクトが来ると考えておくべきだ。

【取りうる対応】
名簿として流通することを防ぐことはできないため、今後、何らかの詐欺のメールや電話、郵便物などが来るかも知れないと考え、警戒心を高めておくことが大事だ。家族と同居している場合は家族にも注意を促しておくことをお勧めする。

【取りうる対応】
特殊詐欺で身分証明書の画像を提供してしまった場合にどのような被害が予想されるのかは、こうした犯罪を数多く処理してきた警察が一番よく知っているのではないかと思う。そのため、金銭被害がなかった場合でも身分証画像や個人情報への不安に関して相談してみることもお勧めします。

緊急ではない相談の場合は警察相談専用電話に電話してみてください。

運転免許証やマイナンバーカードの悪用と聞いて真っ先に頭に浮かぶのが消費者ローンや後払い決済の悪用ではなかろうか。だが実はその点はあまり心配ないと考えている。何故なら、そうしたケースではeKYC(オンライン本人確認)という仕組みが採用されているのが一般的だからである。eKYCでは、スマートフォンなどのカメラで本人確認書類と自分の顔写真を撮影し、それらをオンライン上で照合して本人確認を行うので、他人の身分証明書の画像だけを持っていても対応できないからだ。

eKYCを導入していない場合でも携帯電話にSMSで認証コードを送信する手法が一般的なので、現実問題として身分証明書の画像だけあったとしても悪用できることは限られているのである。

【取りうる対応】
指定信用情報機関である株式会社シーアイシーでは、
・運転免許証や保険証など本人確認書類の紛失・盗難にあい、第三者による不正利用が懸念されるとき
・自分の名義を他人あるいは第三者に悪用される恐れがあるとき
に本人からの申請に基づき、CICが保有する信用情報に申告情報を登録できる制度が用意されています。

万が一に備えて「私の名義を使われるうことがあるので本人確認をしてください」と本人申告をしておくと良いだろう。手数料は1000円。詳細はCICにお尋ねください。

CIC本人申告とは
https://www.cic.co.jp/mydata/declaration/index.html

以上が私が思いついたことだが、「他にもこんな悪用事例があった」「こういう対処法がある」といった情報をお持ちの方は是非、コメント欄に情報をお寄せください。

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