調査委託機関:財団法人 社会安全研究財団
調査受託機関:WEB110.COM

本報告書は以下の2項目から構成されています

A.調査研究事業の成果の概要
B.ユーザーアンケート自由回答欄の参考意見(75件) →アンケートを見る

報告書の全文は公益財団法人 日工組社会安全研究財団の下記サイトで閲覧可能です。

https://www.syaanken.or.jp/?p=1760


インターネットオークション(以下ネットオークション)は、情報発信の双方向、地理的無限定といったインターネットの特性を生かしたサービスとして発展しており、国内最大手のネットオークションサイトでは常時220万点、1日当たり平均26万点もの新規出品数が行われている。

現在のC2C型ネットオークションは、単に既存の消費者対消費者の取引と従来の競売の掛け合わせに過ぎない。運営者ではなく売り手が、販売が行なわれるまではその商品を所有し、そして支払いや商品の引渡しについて買い手と直接取り引きする責任を有するという点において、新聞などの項目別広告やフリーマーケットのような既存のC2Cの取引に類似している。

また、ネットオークションは、価格が入札を通 じて決定される点では従来型の競売に類似しているが、売り手の代理人である競売人が存在しない点では異なる。しかし一方で、無許可での古物営業や、詐欺、盗品の処分の場としてネットオークションが利用されるなど、平成13年度の警察へのネットオークション関係の相談件数は約2099件と高水準で推移しており、ネットオークションの持つ独特な性質とその利用の増加により、法律上および政策上の問題が数多く発生している。

●ハイテク犯罪等に関する相談件数(警察庁ホームページより)

 ネットオークション関係全相談件数
平成11年24件2,965件
平成12年1,301件11,135件
平成13年2.099件17,277件

二者間の取引および従来型の競売の双方に適用される国家、および国際レベルの規則は存在するが、既存の古物営業法はC2C型ネットオークションに適用されるのか、そして政府の消費者保護機関がこの新規市場における消費者の保護を保証する上で果 たし得る役割はあるのかについては明確ではない。よって本調査事業においては、ネットオークション等に関し、ビジネスとしての現状並びに古物取引の適正化及び犯罪予防の観点から見た諸問題について、国内外の調査を行うと共に、対策の在り方について国外の事例も参考にしつつ研究を行い、もって公共の安全と秩序の維持に寄与する方策を見出すことを目的とした。

調査の内容は大別して以下の4つの項目から構成される。

  1. 「国内外の主要ネットオークションサイト」及び「国内個人売買仲介サイト」「新聞・雑誌等の個人売買広告掲載サービス」に関して、その認証方法、取引形態、収益モデル、売買への関与の度合い等の取材を行い、運用形態別 での盗品の流入状況、詐欺などの発生状況を比較調査
  2. ネットオークションに係る法的側面
  3. ネットオークション利用者に対するアンケート調査
  4. 諸外国の行政機関等における諸問題への規制、検討内容の事例調査

以降、各項目について、その概要を紹介する。

インターネットオークションを舞台とした詐欺や盗品の流入といった問題が顕在化したことに鑑み、これらの発生原因が主催者側の運営システムや媒体の伝搬能力とどのように関係しているのかを検証するため、主要ネットオークションサイト数社と、既存の媒体における個人売買広告掲載誌に対し取材調査を行った。この結果 明らかになったことは次の通りである。

  • 主催者側の掲載審査を受けずに直接利用者の意思表示が画面に反映されるネットオークションは、編集部による掲載審査が行われている雑誌媒体に比して詐欺や違法出品の実情を把握していない印象を受ける。このことはユーザアンケートの結果 からも伺える。
  • 利用に際して厳格な本人確認を行っているところは、トラブルの発生件数も低く、かつ相対的に主催者自らが積極的に不適格者排除の努力を行っている。
  • 手数料の有無や金額の大小と、トラブル防止策の実施内容には必ずしも相関関係がない。
  • 盗品の流入は雑誌媒体では皆無だが、オークションサイトでは存在する。

某雑誌では過去に1年ほどインターネット版として個人売買広告サイトを運営した。その際、クレジットカードによる本人確認を条件とした会員制とし、更に、会員証を自宅住所宛に郵送して「会社や私書箱を使用していないか?」等を目視にて確認する方法を採用したためトラブルは1件も発生しなかった。しかしその後、無料のネットオークションサイトが出現するにつれ利用者が減り閉鎖を余儀なくされている。

今後、ネットオークションが軒並み有料化に踏み切ることになれば、いかに価格競争力を保ちながら取引の安全性を担保できるかがポイントとなるであろう。すでに一部のネットオークションサイトでは会員カードの郵送による住所確認を実施していることから考えても、今後はこの方法が主流になるべきではないかと思われる。

しかしながら現実には必ずしもそうした安全性の高いサービスが消費者に支持されているとは言い難く、利用登録の簡便さやサービス提供業者の知名度等が集客に大きく影響しているのが実状である。そしてそうした大規模なサイトになるほどトラブル防止への対策やトラブル発生後の対応姿勢が低下する傾向が見られる。

ネットオークション利用者については、その売買形態により特定商取引法や古物営業法の規制対象になることがあるが、ここでは市場主としての主催者側に現行の古物営業法を適用することの妥当性について検討してみた。

●収益モデルと事業者責任
ネットオークションサイトは自ら物流網や在庫資源は持たず、専ら利用者の売買情報のみを仲介するサービスを提供することにより直接的間接的に収益をあげる業態を特長としている。収益モデルを基軸としてオークションサイトを分類すると次の表のようになる。
●ネットオークションの収益モデル

無料型広告料等を主な収入源とし利用は完全無料e-bay
出品手数料型落札の有無によらず一律出品手数料を徴収するBIDDERS、楽天フリマ
成約手数料型落札価格に応じて一定の手数料を徴収するBIDDERS、楽天フリマ
会費型登録者から一定額の会費を徴収するYahoo! Auctions

一般的にネットオークションでは、売買契約は出品者と落札者が直接行い、サイト運営者は、売り手がホームページに商品説明や取引条件などを載せ、買い手がその条件を検索し自己の希望入札価格を提示するといった「情報提供フォーマット」を提供するだけであり、手数料を徴収するものや月額固定会費を徴収するもの等があるものの、基本的には取引には直接介入しない。

情報仲介型の場合、サイト運営者は売買契約の主体となることはないが、古物営業法に言う「委託を受けて売買」を行っているか否かが問題となる。すなわち主催者が出品された物品の保管を行い、買い手や価格の決定等に関与するなど売買契約の成立に実質的に関与しているかどうかが問われる。しかしこの点において、国内の主要なオークションサイトに関しては委託売買形式に該当するものは見受けられなかった。

●売買契約への関与の側面
成立した売買より成約手数料を徴収する形式を採用しているオークションサイトの場合、売買契約の成立を管理し、売買契約成立の存否を確認できる立場にあるという点において、売買委託を受けて商品を展示する形態の古物営業と極めて近接する業態であると言えるものの、商品の現物を預かることがない点において、現行の古物営業法で定義するところの「委託を受けての売買」とは異なり、もって同法をそのまま適用することには無理があると思われる。

国内のインターネットオークション利用者約二千人を対象に、トラブルの経験や対処結果 を聴取し、そこで遭遇した問題点を把握することによりオークションサイトに求める付加機能や改善点の指標を見出すことを目的にアンケート調査を実施した。設問は全部で16問からなるが、各々の回答内容の概要を以下に紹介する。

(1)「オークションの参加経験」については、「主に入札中心」との回答が75%を占め、「出品」のみを行っている利用者は3.46%と言う結果になった。

(2)「最もよく利用するオークションサイト」については、国内最大手のYahoo!Auctionsが86.63%と、2位の楽天フリマの7.02%と比べても圧倒的なシェアを確保しており、国内においてはほぼこの1社が独占状態にあるということがわかる。

(3)「そのオークションサイトを利用する最大の理由」については、63.27%が「出品点数の多さ」と答えており「取引の安全性」を挙げた者は6%に満たなかった。安全性よりも掲載商品の多さが優先される傾向が見られる。

(4)逆に「そのオークションサイトで不満に感じる点」では、1位「手数料」(23.9%)2位 「取引の安全性」(23.33%)に続いて3位「不満はない」(18.57%)と続いている。自由回答欄の意見を見ると、「手数料」に見合ったサービスの提供がないことが不満の理由である意見が多かった。

(5)「オークションでのトラブル経験」については、68.74%が「ない」と答えている。が、言い換えれば100人に30人が何らかのトラブルの経験を持つという事はB2Cでの取引と比べて異常な多さではないかと思われる。これについては、業法や消費者保護関連法の適用を受け難いC2C取引特有の問題が影響していると思われる。

(6)「トラブルの種類」については、1位「一方的な取引のキャンセル」(16.81%)2位 「届いた商品が傷ついていた」(13.88%)となっており、「商品が届かなかった」と言うケースも2位 と同数で並んでいた。

(7)「トラブルに遭遇した際の代金の支払方法」については「銀行振込」が70.63%と圧倒的多数で「代金引換」(6.27%)や「エスクロー」(0.17%)を利用していた者はごくわずかだった。このことが詐欺に遭った場合に被害回復を困難にしている最大の原因であると思われる。今後、個人間決済にもクレジットカードが使用可能な決済代行サービス等が登場すれば債務不履行時の損害も保険で補償される可能性も期待できる。

(8)「トラブル発生時の対処」については「当人同士で話し合った」が40.30%で1位 だったが「何もしなかった」と答えた人も13.73%で3位に位置している。「警察に通 報した」と答えた人は10.44%で5位だった。

(9)「トラブルの解決状況」については約53%が「解決できた」と答えており

(10)「解決できた理由」の約70%は「当人同士の和解」によるものだった。詐欺などの事案を除けば、取引相手の身元が判明していることが解決の条件になっていることが伺える。そのことを裏付けるかのように

(11)「トラブルが解決できなかった理由」では「相手の身元が不明」が約35%で1位 となっている。

(12)「トラブルを防止するために有効だと思われる手段」については意見が分かれたが「完全に予防する方法はない」が17%で1位であったことが印象的だった。また約67%がオークション主催者になんらかの安全対策が必要と答えており、逆に利用者の自己責任と答えた人は24%程度であった。

(13)「取引相手の身元確認」については、大半の利用者が「行う」と答えているものの「行わない」と答えた人が2割以上いることには驚きを隠せない。

(14)「エスクローサービス」については、いかなる場合でも利用しないと答えた人が30%程度存在し「自分が落札者の場合は必ず利用する」(3.6%)と比べると利用状況は極めて低いと思われる。

(15)「手数料を徴収するシステム」についての意見としては「手数料に見合ったトラブル防止、保証等のサービスが期待できる」(30.68%)と「費用が余分にかかるので利用しない」(30.57%)が僅差で1位 2位を占めており、利用者が自己の経験と自信に基づいて安心を買うか安価を買うかの意見に分かれるようである。

(16)「利用者の身元確認に関してのオークション主催者の関わり方」については、約70%の回答者が何らかの形で「オークション主催者に利用者の身元確認」を期待していることに対し「取引当事者の問題であって主催者は関わるべきではない」との回答は8%であった。

以上の結果から、利用者はオークション主催者に「取引の安全性」と「安価な手数料」を期待する一方で現実には出品点数が多いことを条件に利用するサイトを決めていることが分かり、それでいて積極的に取引保証制度を利用したり取引相手の身元確認を行っている者は多くないということも分かった。この状況で詐欺の被害に遭うことには利用者側の自己責任も大きく影響していることとは思うが、盗品等を知らずして購入してしまうことについては利用者側では避け難い問題であり、やはり古物の出品に際しては何らかのチェック制度が必要と思われる。

「米国連邦取引委員会(FTC)」ではすでに「FTC条例」がネットオークションにも適用されているが、国会では、別 途インターネット関連(オークションに限らず)対策を審議中とのこと。現在ある条例や規制は、もともと事件がネットオークションを介していてもいなくても適用されているため、ネットオークションのための特別 な規制や条例は定められておらず、また今の所はそうした法規を立案する予定もないとのこと。インターネットはグローバルなメディアであるから、いくら米国が規制を掲げても、それを全てのケースに適用することは難しいとのことだった。しかしこの問題に関して、国家間で協力しようという動きはすでに始まっており、今年4月には、主要各国が集まる、インターナショナル・マーケティング管理ネットワークのミーティングにおいて、国境をこえたインターネット詐欺の問題について話し合われた。

「米国オンラインオークションユーザー協会」のコメントでは、「ノースカロライナ州とニューハンプシャー州で、リアルのオークション規制をオンラインオークションにも適用させようという動きがあったが(*1)、Online Auction Users Association(O.A.U.A)はこれに猛反対し、結果的にこの案を立ち消えにさせることに成功した。リアルのオークションと、オンラインオークションは、全く別 の物である。オンラインオークションの売り手は、リアルのオークションの競売人のように、他人の財産を委託販売しているわけではない。」との報告があった。また、「ネットオークションに免許は必要無い。詐欺に関する規制はすでにオンラインオークションにも適用されている。ネットオークションの出品者に免許を課すことは、ガレージセールやフリーマーケットの出品者に免許を課すようなもので、まったくメリットはない。」といった意見であり、詐欺に関する規制や法が多すぎるくらい存在する米国においては、これ以上の新たな法律を望んでいない様子が伺えた。

(*1) 1999年、ノースカロライナ州のノースカロライナ競売ライセンス評議会によって、リアルのオークション法をオンラインオークションにも適用しようという提案あった。 ノースカロライナ州におけるオークションライセンスは、クラスの受講か、2年間の見習い経験を経た後、試験に合格し、ライセンス料を支払うことが義務付けられている。 オンラインオークションの出品者に対しての規制案は、オークションライセンスの必修事項をそのまま適用するのではなく、ライセンス料の支払いと、州のオークション法に関する試験に合格することだけを義務付けようというものだった。さらに、何か問題が起きた人々のために「復興資金」という名目で、$50を徴集する。しかし、この案はユーザーからの猛反対にあい、2000年1月の時点で留保。実質的には立ち消えとなった。

米国では、FBIと全国頭脳労働者犯罪センターの協力で2000年5月にインターネット詐欺苦情センター(以下IFCC)を発足している。これにより、インターネット詐欺の被害者が、これまで警察署で行わなくてはならなかった面倒な書面による手続きを、IFCCのホームページ上にある苦情申請フォームによって簡単に行えるようになった。

寄せられた報告はFBIと全国頭脳労働者犯罪センターの職員が受け付け、IFCC に常勤しているアナリストが何らかの法律に違反していると判断した件については、被害者の同意のもとに法的機関(州警察や FBI)へ通告される。同センターには最初の半年だけで20,014件の苦情が寄せられ、うち6,087件が国内外の法的機関へ通告された。

このセンターが発足する以前、被害者は地元の警察署に被害を届ける以外、被害申請の手だてがなかった。しかし、加害者が他の州や国にいる場合、司法管轄権に関する問題が生じ、適切な処理を行うことが困難とされてきた。IFCCはオンラインで苦情を受け付けるため、被害を適切な政府機関へ迅速に報告することができる。

寄せられた苦情・被害届けは速やかに地元警察・州警察または FBIへ通 達され、IFCCのデータベースに記録される。新たに寄せられた苦情はこのデータベースで必ずチェックされ、他の苦情との関連性を調べたり類似の事件の情報を照会できるようにしている。苦情処理の他にも、インターネット詐欺に関する統計をまとめたり詐欺の手口や流行についてのデータを集めるなどといった活動も行っている。

2001年に入ってからIFCCが受け付けた被害届けは4000件以上で、今年1月から4月の間の被害額は320万ドルとなった。被害者一人あたりの損害額平均は776ドル。この数字はあくまでも IFCCに届けがあった被害だけを表わすため、実際の被害はもっと大きいと考えられる。

IFCCが今年5月に発表したオンラインオークション詐欺の調査結果

●インターネット詐欺犯罪のうち、オークションでの詐欺行為が占める割合は64%。
●一日に130万件の取引が行われているオンラインオークションのうち、詐欺として訴えがあるのは、全体の1%にも満たない。
●被害者の34%が相手側の性別すら把握していない。
●被害者の25%が相手の住所を知らず、相手の住所を持っていると答えた人のうち14%は私書箱の住所だった。
●被害者の80%が代金を郵便為替、もしくは小切手で支払った。
●2000年の一年間で、オンラインオークション詐欺の損害総額は400万ドル。

1999年12月9日に採択されたOECD ガイドラインは、B2C型オンライン取引に対する効果的な消費者保護の中心的な性質を記載しているものの、C2C型取引は直接的には対象とせず、またガイドラインの原則全てが必ずしも全てのオンライン取引に適用されるわけではないことを認識しているが、ガイドラインの原則の中には、C2C型ネットオークションに関係する運営者、売り手、および買い手に対する手引きとなるものもある。

しかしここでも、C2C型ネットオークションは従来の自発的な競売とは異なり、運営者は商品自体を所有することがなく、支払いおよび商品引渡しの責任もなく、また売り手の代理人として取引を行なうものでもないとの位置付けをしており、運営者に対して従来の競売法の適用を認める考えは見られない。

ニュージーランドのMinistry of Consumer Affairsに対する取材では、同省がネットオークションでの様々な問題について事業者や行政機関を交えた研究会などを実施した事実はなく、「現時点では、ニュージーランドのネットオークションにおいて、制度化の検討を要するほどの問題は発生していない。」と答えている。

ニュージーランド政府が、競売者に関連する現行制度の変更を検討するには当局職員がニュージーランドの市場に問題があるという証拠を提示しなければならないが、当局による調査時には市場問題が存在していないようである。今の時点ではニュージーランドの犯罪法(Crimes Act)および公正取引法(Fair Trading Act)により適切に対応できているのではないか、との見方のようである。

一方、同じニュージーランドの消費者団体全国連盟(VZBV)の情報によると、2000年に複数のオークションサイトが「Arbeitskreis Online-Auktionen (A.O.A) = オンライン・オークション作業共同体」 を創立したとのこと。この A.O.A の目的は以下の二つ;

1)オンライン・オークションの法律(その状況)を明確にすること。
2)Quality Standard (質基準) に関して合意すること。

そして「ネットオークション運営に関わる法改正や対策・規制は必要と思われるか?」という問いに対し「ある」と答えた上で、具体的には「オークションサイトが出品者を更にコントロールする義務」が必要と答えた。その義務とは以下の三つ;

1)利用者が個人情報(フルネーム、召喚可能な住所)を明確にしないかぎり、オンラインの取引場に出すべきではない。
2)売買が出品者によって無効とされた場合、落札者はオークションサイトに対して基本的な情報取得権利があるべき。
3)オークションサイトは利用者にエスクローを提供しなければならない。

また同連盟は、ネットオークションにおいて詐欺などのトラブルが多発する原因は「匿名性」と「インターネットの急速な普及」にあると捉えている。つまりは、もともと隠れていた犯罪エネルギーが放ちやすくなったのではないかとの見解である。そして、ネットオークションサイトの数が多いことから、これらを犯罪に利用しようと思う者にとっては、安全面 が一番欠けているサイトを選び出すことも簡単だと答えている。


インターネットオークションの登場により詐欺、偽造品、禁制品の横行が顕著になったことは犯罪統計からも明らかであり、尚かつ、これらの犯罪が予防・検挙・被害回復の各側面において極めて対処が困難であることも事実である。その理由を整理してみると、(1)匿名性と民事紛争処理(2)広域性の2つに分けられる。

現行の公法規制では、インターネットオークションサイトに対して犯罪防止策やトラブル発生後の被害回復への法律的責任義務を課すことは困難であり、個人間取引を行う上でのリスクマネジメントは消費者本人の自己責任に委ねられる要素が多いと言える。

しかしながら表面上、取引相手が事業者なのか個人なのか判断がつきにくいと言う匿名性の問題と、インターネットオークションへの盗品等の混入を、システム上も法制度上も防止する機能が用意されていない現状は、窃盗その他の犯罪防止の観点からも好ましくない状況であり、消費者に対する啓蒙や教育はもちろん重要であるが、犯罪防止という点においては行政による対策も検討する必要はあるだろう。

また、サービス提供業者においても自己の運営姿勢が社会に与える影響を十分に考慮した上で、法規制に依存しない形の自発的な事故防止策を講じる道義的責任があるものと感じられる。例えばある利用者について複数の苦情が寄せられていないかどうかを把握し、不適格者を排除する体制など、少なくとも不正行為に係る利用規約を掲げているからには、それに違反する行為を確認した時点で規約にのっとった適正な対応を実行すべきではないだろうか。

おわり