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第17回 国際電話問題考察—2002年

この記事は2002年8月4日に投稿したものです。

1.国際電話問題とは

ある日突然、国際電話会社から20万円以上もの通話料の請求がやってきた。通話先は全く身に覚えのないセイシェルとなっている。通話明細を見ても、その日時に電話をかけたことはない。電話会社に問い合わせてみても「確かにお客様の番号から通話されていますのでお支払いいただくことになります」の一点張り。よくよく調べてみると、インターネットをしている最中にダイアルアップ先を書き換えてしまうプログラムをダウンロードさせられていたらしい・・・。

現在こうしたトラブルが多発している。そこで今回は、こうした国際電話トラブルのからくりと問題点を考察してみることにする。

2.関係会社構図

A.日本のキャリア(国際電話会社)
B.海外のキャリア(国際電話会社)
C.エージェント
D.リセラー
E.国内の情報提供業者

BとCとの間には裏取引があります

エージェントとしてはフランスの比較的大きな電話会社が有名で、その他ではスペインやアメリカにも同様のエージェントが存在する。その下にさらにリセラーのようなサブエージェントが多数存在します。

エージェントは、まずは収入の低い発展途上国に目をつけ、そのキャリア(主にケーブルアンドワイアレス)で複数の専用回線を契約し、その回線番号をダイアルアップアクセスポイントとするRAS(リモートアクセスサーバ)を設置します。

このRASのアクセスポイントが、いわゆるダイアルアップ先の電話番号となり、その電話番号にダイアルアップするように設計されたプログラムをいたるところでばらまきます。

プログラムによりダイアルアップ先が書き換えられた場合、被害者のコンピュータモデムは、当該RASサーバーを経由してインターネットに接続することになります。よって通 話先はプロバイダではありません。

3.利益構造

被害者が上記の方法により例えばセイシェルにあるRASサーバーにダイアルアップして、そこまでの通話料として国内キャリアより1分あたり320円 合計32000円(100分)の請求を受けた場合、その内の一定額(例えば16000円)が、補償額として日本のキャリアからセイシェルのキャリアに支払われます。(補償額の国際清算については後述)

次に、セイシェルのキャリアは、あらかじめエージェントと取り決めておいた算定基準に基づき、エージェントにキックバック(裏取引)を支払います。

キックバックの相場は、およそ1分あたり80セント(日本円で100円)なので、この例の場合はセイシェルのキャリアが得た16000円の通話料のうち、100円×100分=10000円がエージェントの取り分となります。 エージェントの下にリセラーが介在する場合には、その間においても一定額のキックバックがあります。

このレートは、日本から各国までの通話レートに関わらず、一律「1分あたりいくら」という形式で決められているため、アメリカのように日本からの国際通話料が1分20円と安い国を相手にしては成り立ちません。また、一つの国に複数のキャリアが存在する場合には、競争原理により通話料の値引き交渉が可能ですが、小さな国では一社のキャリアが市場を独占しており値引き交渉に応じません。これが、ダイアルアップ先が発展途上国に偏っている理由です。

4.最近報告されている国際電話トラブルの特異な例
  • ADSL利用者で、電話回線が物理的にPCに接続していないのに国際通話料の請求が来た。
  • 請求書に記載されている通話時間帯には家族が全員外出しており、PCの電源も落ちていた。
  • 電話の契約者名義でない家族宛に、正規の電話会社から通話料の請求書が来た。
  • 接続先の国番号は122 「ASCENSION」が多い。

KDDIの報告によると、国際通話料をめぐる苦情の件数は月に5千~7千件で、ほとんどがアナログ回線のダイアルアップである。そのうち、支払い拒否の姿勢をしめしている契約者数は300~400件程度とのこと。また、現在の通話先の約7割はディエゴガルシアで、3割弱がセイシェルであるとのこと。いずれも旧英国領であり、両国の通信はケーブルアンドワイアレス1社が運営していると言ってよいでしょう。

5.請求がケーブルアンドワイヤレスに集中している理由

あくまでも推測の域を出ないが、これには日本のキャリアと対話地のキャリアとの国際清算の負担割合に帰するところが大きいと思われます。

まずは国際清算の仕組みについてご説明します。

国と国(実際はキャリア間)においては、2ヶ月(異なる場合もあります)おきにそれぞれの発信トラフィック総分数を相手キャリアに通知します。

たとえば、日本からディエゴガルシア宛に10万分トラフィックがあり、ディエゴガルシアから日本宛は1万分トラフィックがあったとします。双方の発信トラフィックを合計すると11万分となりますので、5万5千分が半分のトラフィックになります。そこで、日本から4万5千分を相手に補償してあげれば、ディエゴガルシアは5万5千分となり、双方の国がトラフィックを折半し補償する結果となります。

実際の精算は、それぞれ自国で設定している(お客様に請求している)通話料金に関係なく、あらかじめ合意済みの精算レート(時間帯曜日に関係無く1分当り○○SDR)に、上記の補償分数を掛けた金額を相手キャリアに支払うことになっています。
※SDRというのは、国際計算に使用する単位で、為替により上下します。

現在、日本の各社とも、ディエゴガルシアやセイシェル、アセンションといった対話地のキャリアにこのレートを引き下げるべく交渉していますが、結果は芳しくないようです。どこからもうまくいったという言葉が聞こえてきません。日本では競争状態ですが、相手国はケーブルアンドワイアレスの独占状態ですので、それも影響しているのかもしれません。通話料も現時点ではおよそ1分320円と高額です。これがもし、米国と同じように1分20円以下になれば、通話料からキックバックを得るエージェントは事業としてやっていけず、自然消滅するはずです。

これらの事情を念頭に置いた上で、あらためてディエゴガルシアやセイシェルへの日本からの発信量と、それらの国から日本への発信量を比較すると、ダイアルアップ書き換え問題により圧倒的に日本からの発信が多くなっています。この場合、上記の国際清算により、結果的に日本のキャリアは大幅な補償負担を強いられることになります。つまり本来は、日本のキャリアは、ダイアルアップ書き換え問題により損をしていることになるので、会社としても出来れば無くしたい問題であるわけです。 ※厳密には、日本の国際電話会社には各社が設定する「収納料金」という取り分があるので、決して赤字になることはないが、社会的に好ましくない方法であるとの認識から、積極的にとは言えないまでも、この問題に対処していく姿勢はあるようだ。

ところが、ここで唯一立場が違うキャリアの姿が見えてきます。それがケーブルアンドワイアレスなのです。なぜならば、対話地で通信事業を独占しているのも同じケーブルアンドワイアレスだからです。たとえ日本のケーブルアンドワイアレスIDCでは損をしても、グループ会社間で補償金のやり取りをしているだけですから、結果的にグループ全体としては大幅な収益につながるわけです。

かつては日本の回線契約者への請求元はKDDIが主流でしたが、あまりにも問題が表面化したため自主規制として海外への発信の際には音声ガイダンスを流すことにしました。このことにより、短時間に多数の発信が集中すると、音声ガイダンスの影響でトラフィックが急増し回線に輻輳が生じます。こうした症状があらわれた場合には、キャリアとしては特定の番号への発信規制を行うことがあり、エージェントとしては効率よく稼ぐことが困難になりました。このため、そうした自主規制を全く行わないケーブルアンドワイアレスに移行してきたのではないかと言う推測が立ちます。ただし、音声ガイダンスが直接、書き換え問題を回避したわけではありません。ガイダンスが流れようが流れまいが、発信者つまりユーザーがそれを無視すれば接続できたので、モデムの音をミュートにするような書き換えプログラムに対しては効果がありませんでした。

6.対応策の検討

(1)法的視点

A. 消費者の意図しない行為により高額の債務を生じさせる行為は、ダイアルアップ書き換えを実施している業者の詐欺に等しい行為と言えます。よって、犯人の刑事責任と不法行為による損害賠償責任の問題なので、これを通信事業者の対応だけに任せておいてよいのだろうか。告発あるいは国際法上での捜査の部分で、政治的なアプローチを検討する必要がある。

B. 「みなし契約」の改定

※「みなし契約」・・・ NTT電話サービス利用約款第89条

「NTTと電話利用契約を締結することによって、他の業者(※)とも電話利用契約を締結したことになる」
※NTTコミニュケーションズ、日本テレコム、ケーブルアンドワイヤレスIDC、KDDI他

いわゆる「みなし契約」と上記のサービス約款により発生した通話料に関しては 当然支払いの義務があると・・・・。
約款の見直しを裁判まで持ち込むしかないのが現状です。

C. 約款の見直し

通話料については、利用する意思があったかどうかを問わず(他人が電話を利用したときも)加入契約者が通話料を支払う義務を負うことが約款上定められている。 (NTTサービス利用約款第71条)
*同様の約款は他の電話会社にも設けられている。

D. 対話地のキャリアへの対応を日本のキャリアだけに任せるのは困難なので、政治的な交渉が望めないか。

(2)技術的視点

A.パソコンの出荷時点において、ダイアルアップ監視ソフトをプリインストールできないか

B.ブラウザのデフォルトのセキュリティ設定で「アクティブコントロール」を無効に出来ないか

7.料金の支払義務

インターネットを利用した国際情報提供サービスの場合、利用する意思がなかったことを根拠に国際電話料金の支払を拒むことは極めて困難です。
なぜなら、加入電話から電話がかけられた場合には、利用者に国際電話をかける意思があるかどうかを問わず、加入契約者が通話料の支払義務を負うことが約款上定められているからです。 これは、大量化・定型化された国際電話サービスの提供において、個別の通話について利用者の認識の有無を問題にするのは非現実的であるという理由によります。 理論上は、こうした場合、情報提供業者に対して料金額相当の損害賠償を請求することが可能です。しかし、現実には、業者を特定するのが困難なケースが多いようです。 結局、事後にできることはほとんどないと言ってよく、事前に被害の予防に努めることが重要です。

8.相談実例はこちらで見れます

 

国際電話被害相談実例


参考: 旧郵政省プレスリリース

発表日  : 2000年10月12日(木)
タイトル : インターネットを利用した国際情報提供サービスに関するトラブルの防止
http://www.yusei.go.jp/pressrelease/japanese/denki/001012j601.html
参考:総務省から国際電気通信事業者各社に対する要請内容
(KDDI、ケーブル・アンド・ワイヤレス・アイディーシー株式会社、東京通 信ネットワーク株式会社、ドイツテレコム・ジャパン株式会社、日本テレコム株式会社、エムシーアイ・ワールドコム・ジャパン株式会社、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社)

1.ホームページ、請求書同封物等を通じて、利用者に対し以下の措置を行うこと

  • インターネットを利用した国際情報提供サービスに関するトラブルが多発していることの周知
  • 不用意にプログラムをダウンロードしない旨の注意
  • ブラウザの設定でプログラムをダウンロードする際に確認画面 が表示されるようにすることの奨励
  • 接続先が海外に設定されている場合に警告を発するソフト(インターネット上で無料で配布されているもの)を利用することの奨励
  • ダイヤルアップ音及び警告アナウンスが聞こえるようにモデムの音量 を上げておくことの奨励
  • 国際電話契約の利用休止サービスが行われていることの周知

2.特定対地(インターネットを利用した国際情報提供サービスに関するトラブルが多発している対地。以下同じ。)宛の利用が一定金額以上になった場合、必要に応じて、請求書を随時発行すること

3.必要に応じて、特定対地宛の国際電話につき、接続前に国際電話である旨のアナウンスを挿入すること(モデムの音声で確認できるようにするため)

4.必要に応じて、直接又は特定対地の国際電気通信事業者を通じ、情報提供業者に対して、国際電話料金が課金されることをホームページ上で明確にするよう要請すること

5.不適切な計算料金の設定がインターネットを利用した国際情報提供サービスに関するトラブルの原因となっている場合、必要に応じて、特定対地の国際電気通 信事業者と計算料金改定の交渉を行うこと。

参考: 被害に遭わないための予防策
https://web110.com/jirei/jirei.html#14

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