ネット上には掲示板がいくつあるのだろうか。数えることなど到底出来ないが、日本だけでも数万件はあるだろう。その大半は個人が運営するものだと思う。WEB110の掲示板も言ってみれば個人が運営するものだ。

さて、今回のテーマは「掲示板管理者の責任」であるが、実は今、掲示板におけるトラブルが目に余るのである。トラブルの内容は概ね「名誉毀損」と「著作権侵害」であるが、こういった内容が書き込まれた時の対応や、書き込まれないための対策が充分でない掲示板が非常に多いと感じる。今回は特に「名誉毀損」に焦点をおいて考えてみよう。


8月25日、i-mode掲示板で女性を中傷した男子高校生が名誉毀損で逮捕。
理由:「女性にメールで侮辱され頭にきてやった」

9月20日、掲示板で知人女性を中傷した消防署員が名誉毀損で逮捕。
理由:不明

9月21日、他人の電話番号を出会系HPに載せ侮辱した28歳の男性会社員が書類送検
理由:「自分も同じような被害に遭ったので、だれかにやってみたかった」

9月21日、他人の電話番号をi-mode掲示板に載せ侮辱した33歳の無職女性が書類送検
理由:「階上で子供が走って騒がしく、困らせたかったから」。

この1ヶ月の間に逮捕された名誉毀損事件である。「1ヶ月に4件も」と捉えるか「4件しか」と捉えるかは人によって違うだろうけど、少なくともWEB110には1ヶ月に40件以上の同種の被害報告がある。こうしている今も、どこかの掲示板では他人の電話番号が無断掲載されていることだろう。

上記4件の事件を見ても分かるとおり、被害者と加害者の関係は、いずれも学校の同級生、元交際相手、近隣の住人など顔見知りによる犯行である。動機に至っては幼稚きわまりないものだ。しかし電話番号を公開された被害者のもとには1日で50件近くのイタズラ電話が来ることになり、さらに住所まで公開された場合には、現実のストーカー被害という2時災害の危険にさらされることになりかねない。つまり掲示板による個人攻撃のダメージは、その手軽さに比して想像以上に大きいのだ。

では、こうした名誉毀損の被害を予防する方法はないのか?私はそうは思わない。掲示板の管理体制しだいで充分な抑止効果 が期待できると思うのである。何故なら、他人を中傷する書き込みをする人間は、必ず自分の身元は隠そうとする。言い換えれば、自分の身元が判明する状況では書き込まないのだ。

自分の身元を隠す方法として最も多く利用される方法は、海外のプロキシサーバーを経由する方法だ。次に、アクセスログを記録する機能がない掲示板自体に書き込む方法。そして最後に、掲示板の管理者自体が不法行為に荷担している場合だ。

これらの原因は、すべて掲示板の管理者に責任があると思う。もちろん、名誉毀損をしたのは投稿者であり管理者ではないのだが、不特定多数の人間が目にする掲示板を所持するからには、そこに書き込まれる内容に関しての編集管理責任があるのだ。正確に言うと、投稿内容に関して管理者が削除・編集を行っている場合には、その行為について責任が発生すると言うことだ。プロジティー事件で掲示板の管理者が有罪になったことが、それを物語っている。これにより「書いたのは俺じゃない」といった他人事のような態度で被害者の苦情を無視するような管理者はもはや同罪ということだ。

以上のことから、掲示板の管理者は万一、違法な書き込みがなされた場合には速やかに記事を削除し、被害者や警察からの要請があればログの提出ができるように準備しておくべきだろう。しかし、それだけでは充分とは言えない。大事なのは事後対応ではなく事前対策だ。違法な書き込みをしづらくしておくことが被害を生み出さない最も有効な手段である。その為に、海外のプロキシーサーバー経由での書き込みを出来なくしたり、厳正な会員制により投稿者を特定できるような高度な管理能力が管理者には要求されると感じる。